年が明け、雪もようやく溶け出した3月、二つの目的で2回被災地を訪れました。
一つは、2件のお宅にピアノをお届けすること、もう一つは、2校の小学校にピアノの音をお届けすることです。
まずは3月7日。
岩手県の山田町で、個人ピアノ教室をされている先生のお宅を伺いました。
今回お届けするのはグランドピアノで、兵庫県宝塚市の方が譲って下さったもの。
「1995年の阪神大震災を乗り越えた運の強いピアノです。このたび被災された方に是非届けて下さい!」とのメッセージとともに、はるばる1000キロの道のりを超えてやって来たのです。
ピアノをとても楽しみにしていた先生の娘さんとそのお友達が、搬入が終わるとすぐに、ピアノに飛びついていつまでも弾いていました。
実はこの娘さん、去年コンサートで山田中学校に伺った際、生徒代表で西村にお礼のスピーチをして下さった方。
ピアノが結ぶさまざまなご縁を感じながら、今度は先生の生徒さんのお宅に向かいます。
先生の誘導で伺ったのは、小学校4年生と2年生の女の子のお宅。
建替えが終わったばかりの新しい家の2階に、クレーンを使って搬入。
ピアノ運搬チームとの連携も手際良く、設置完了後は、恒例のピアノ交流会。
西村が演奏した後、お姉ちゃんがお礼に一曲、一生懸命弾いてくれました。
嬉しそうに見守るおばあちゃんの姿が印象的でした。
明けて3月8日。
この日は、石巻市立湊小学校で行われる植樹イベントに参加してきました。
これは、コンビニエンスストアで同じみ「セブンイレブン」の被災地支援プロジェクトの一環で、レジの横に設置されている募金箱に集まった支援金で、被災した小学校の校庭に木を植えていこう。という活動です。
津波で一階部分が浸水し、校庭も植樹も壊滅となったこの学校、生徒は現在近くの中学校を間借りして授業を受けています。
西村は、音楽室に集まった全校生徒140人に向け、演奏しました。
音に集中する生徒や、リズムにあわせてはしゃぐ生徒など、とにかくみんな表情が生き生きとしています。その様子は、廻りの大人達を安心させ、むしろ元気づけているようでした。
コンサートの後は、生徒さんと教室で給食を頂きました。
好きな食べ物を尋ねると、牡蠣!という生徒がほとんど。
おやつが牡蠣だったりするそうで、羨ましいというかなんというか。と同時に、この町の人たちと海との関わりの深さが伺い知れます。
昼からは湊小学校へ移動し、校庭で行われた「東日本大震災一周年追悼式典」に参加しました。
生徒と一緒に桜の木を植えた後、14時46分に全員で黙祷。
亡くなった児童一人、父兄6名のご冥福をお祈りました。
「多くの支援に感謝した上で今日を一区切りとして前へ向いて歩いて行きたい。」との想いがこめられたこの式典。
震災からほぼ一年がたつこの日は、新たな第一歩踏み出す日でもあるのです。
続いて3月19日。
被災地支援プロジェクト2校目となる今回は、石巻市立万石浦小学校を訪れました。
こちらでは、3,4年生130人を対象にピアノコンサートを開きました。
震災の影響でかなり損傷したピアノでしたが、音楽の先生をはじめ、みんなから大事にされているという音色を奏でていました。
給食を頂いた後は植樹祭に参加。この学校では、いつでも工作などで使用できるようにと、どんぐりの木を植えました。
どんぐりといえば、西村が敬愛する画家のフレデリック・バックさんの代表作「木を植えた男」が植樹した木。
荒れ果てた大地に、誰になんと言われようとも黙々と一本一本木を植えて行くその姿は、西村の音楽の方向性に多大な影響を与えました。
そんな西村は去年、被災地にピアノを届けて行くことを決心しました。
するとその直後にバックさんが来日し、お会いすることができました。
そして今回、実際に木を植えて行く活動に参加すると、今度はバックさんと一緒にアルバムを作ることになったのです。
再びバックさんに後押ししてもらった西村は、これからも一台一台ピアノを届けて参ります。