今回お届けしたのは、5才の女の子がいるピアノが大好きな音楽一家。
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しかし、東北ではありません。
訪れたのは、神奈川県の茅ヶ崎市。
震災後、福島県双葉町から避難してこられたのです。
もともとのお住まいは、原発から3キロ圏内で、現在も立ち入り禁止区域。 大切なアップライトピアノは持ってくることができません。
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ということで、「スマイルピアノ500」活動初の、東京から西に向かってのお届けとなりました。
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伺うと笑顔で迎えてくれたお母さんは、ピアノを搬入し設置が完了するまでの間、これまでの状況や現在の心境を、詳しく話してくれました。
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震災後、もとの家を1度だけ訪れたことがあるそうです。
しかし、目の当たりにしたのは、家があるのに住めないという現実だけ。
今でも、申請すれば2時間くらい立ち入れるそうですが、2度と訪れることはないと思う、と話します。
故郷を失い、先行きも見えない中、なかなか心の整理はつきません。
それでも、「世間的に忘れられつつある今、こうして届けて頂ける事にとても感謝しています。」
そう言って運び込まれるピアノを嬉しそうに見つめていました。
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久しぶりに見るピアノに、娘さんも目をまんまるにして興味津々。
これまでは、近所のお友だちのピアノを借りて、弾いていたそうです。
「これ、弾いていいの?」
西村の横にちょこんと座り、いつまでも鍵盤を楽しそうにはじいていました。
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今年になってからでしょうか、ピアノを届けに伺うと、予め用意していた写真などを見せながら、震災当時のことを詳しく話して下さる方が増えてきました。
まるで、ピアノを届けた我々に対する使命のように。
そのお話を伺って心を揺さぶられ、それを音に託して皆さまに伝えるのが、西村の使命。
最近、そのように感じます。
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お届けした翌月、隣町の鎌倉で行われた「シーサイドピアノコンサート Vol.15」に、お母さんが駆けつけてくれました。
娘さんはピアノが大好きになり、今度ピアノを習うことになったそうです。
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