Yukie Nishimura Official Website

ピアノとピアノの音を被災地に。「Smile Piano 500」

活動の報告

2019.09.07

ピアノを届けに 〜岩手県釜石市

9月7日に、59台目のピアノをお届けしてきました。

今回は、岩手県盛岡市の方が譲ってくださったピアノを、釜石市の方にお届けする、岩手県内でのピアノの橋渡しです。

盛岡市にお住まいの坂本さんからピアノを譲ってくださるとの連絡をいただいたのは今年の5月。
「ヤマハのピアノで型番はU2Cです。私が使っていた50年近く前のピアノでペダルも少しガタガタです。
もし、使ってくださる方がいらっしゃれば」という内容でした。
そこで、スマイルピアノ500の調律スタッフの千田さんが、坂本さんのお宅に伺いペダルなどを調整。
いつでもお届けできる状態にしてくださいました。
調律師さんには、ピアノの調律以外にも修理やメンテナンス、運搬などを手伝ってもらっていて、本当にありがたい思いです。
スマイルピアノ500の活動は、多くの人の思いや協力のおかげで続いているのです。

実は今回、お届けする2日前に、調整をしたピアノをテレビ岩手の「5きげんテレビ」で演奏する機会がありました。
スマイルピアノ500でお届けするピアノを、事前にテレビで演奏するのは初めて。
調律スタッフの千田さんが「できるだけいい音で演奏してほしい」と、テレビ局にピアノを運搬する倉庫の中でも調律してくださいました。
ところが当日、スタジオでのリハーサルで初めて演奏した時は、あまりいい音がでませんでした。
やはり弾いていない期間が長いと難しいのかも。
千田さんも心配してくださっていましたが、西村が試し弾き、リハーサルと、何度も弾くうちに音の響きが復活していったのです。
番組ではスマイルピアノ500の活動にちなんだ、3曲メドレー「微笑みの鐘〜ビタミン〜朝日のあたる家」を演奏。
調律と演奏との共同作業により、本番はとてもいい音を奏でてくれました。
まるで、ピアノに思いが通じたかのようです。


ピアノを譲ってくださった坂本さん、ピアノの調整をしてくださった千田さん、たくさんの方の思いが詰まったピアノを、いよいよお届けすることに!
ピアノをトラックに積んで、内陸の盛岡市から沿岸の釜石市まで移動。

今回、お届けしたのは、ご夫婦でガソリンスタンドを営んでいるお宅。
伺った日は営業日でしたが、仕事を休んでご夫婦が出迎えてくれました。
この日は、息子さんがお店に出てくださったそうです。
震災翌日の12日から、お店に出たというご夫婦。
従業員には、家族を大事にしなさいと家に帰るように促し、2人だけで対応、連日、寝る時間もないほど働き続けたそうです。
釜石、大槌地区では26のガソリンスタンドがあったのですが、津波で20店が破壊、残る6店舗も停電で地下タンクからの給油ができなくなりました。
そんな中、取引のある地元の建設会社から発電機を借用し、営業を再開したのです。
地元の人たちはもちろん、自衛隊や消防車、山を二つ超え歩いてガソリンを買いに来た若者など、ひっきりなしに人が来るため息をつく間もありませんでした。
でももし、このお店が営業していなかったらどうなっていたでしょう。
初めて自宅に戻ったのは震災後1週間を過ぎた頃。
自宅もガソリンスタンドも住める状態ではなく、震災後はアパートを借りていたそうです。
小さな部屋だったけれど足を伸ばして寝られるだけでもありがたかったと話しておられました。

ピアノをお届けした日は絶好のお届け日和。
気温が30度近くあり、汗ばむほどでした。
無事に家の中に運び込まれたピアノを弾き初めです。

まず、3曲メドレーの「微笑みの鐘〜ビタミン〜朝日のあたる家」を演奏。
テレビ岩手の「5きげんテレビ」で演奏した時よりも、さらにいい音を奏でてくれました。
弾き初めが終わったところで奥様から嬉しいリクエストをいただきました。
リクエストにお答えして、オリジナル「素敵にモーニング」を演奏。


次に、西村からのリクエスト。ギターが趣味だというご主人にセッションのお願いです。
最初は照れておられましたが、ベースとアンプを持ってきてくださり即興でセッション。
「スタンド・バイ・ミー」を演奏して、大いに盛り上がりました。
ご主人は今もお仲間とライブを行なっておられます。
震災後は無くしたギターの一部を息子さんが見つけて持ってきてくれたそうで、ケースに入った大切なギターを見せてくださいました。
この日は姪っ子さんも赤ちゃんと一緒に帰ってきていたので、お会いすることができました。
姪っ子さんは3歳から中学生までピアノを習っていたそうです。
以前はお正月に帰ってくるたびにピアノを弾いていたので、弾けないのが寂しかったと話してくれました。
息子さんもエレクトーンを習っていたそうです。
横浜で仕事をしていたのですが、震災を機にガソリンスタンドを継ぐと決意。
釜石に戻り、今は頼もしい存在です。

ご夫婦の強い思い、また家族の絆に触れることができた今回のお届け。
ピアノも、あたたかいご家族にかわいがられ、ますます素敵な音色を奏でてくれることでしょう。