Yukie Nishimura Official Website

ピアノとピアノの音を被災地に。「Smile Piano 500」

活動の報告

2023.11.04

ピアノ復活プロジェクト 〜福島県浪江町・双葉町

3月12日(日)福島県浪江町・双葉町〜置き去りピアノ視察〜
10月21日(土)福島県浪江町津島地区〜標葉祭り〜
11月4日(土)福島県双葉町フタバスーパーゼロミル〜復活のピアノコンサート〜

2011年3月に発生した東日本大震災・原発事故により全町避難を余儀なくされ、多くのものが町内に取り残されました。そして時間の流れと共にその役割を終え、消えていったものも数多くありました。ピアノもその一つです。あれから12年が経ち、少しずつ避難指示が解除される地域も増える中、スマイルピアノ500に復興庁から連絡がきました。避難指示区域だった学校に置き去りにされているグランドピアノを救い出したいとの相談です。由紀江さんは、3月11日に福島県いわき市で復興祈念コンサートを行った翌日、浪江町と双葉町の4つの学校を訪れ、合計7台のグランドピアノを視察しました。

避難指示区域だった街は一見普通なのですが、人がいなくて動くものがない、そして音もなく、まるで時が止まっているかのようでした。学校も同じで、下駄箱にはくつが入ったまま、教室の机には教科書が開いたままです。そして音楽室に入ると、楽譜などが散乱する中、グランドピアノがポツンと佇んでいました。12年間、誰にも弾かれることなく置き去りにされていたのです。由紀江さんがフタを開けゆっくり鍵盤をおさえると、寂しそうな音が返ってきました。でも弾いてうちにその音色から生命力が感じとれました。このピアノはきっと蘇る、みんなで復活させよう。こうして置き去りピアノの再生プロジェクトはスタートしました。

それぞれの地域から1台ずつ選定し、スマイルピアノ500のお届け活動でいつもお世話になっている調律師の遠藤さんがピアノを搬出。いわき市にあるご自身のショップに持ち込んで修復作業に取り掛かります。全てのパーツを分解し、弦も全て取り替え修理すること数ヶ月、2台のグランドピアノは見事に蘇りました。奇跡のピアノをはじめ、これまで何百台ものピアノを修復してきた遠藤さん、サスガです。
由紀江さんの提案で、浪江町のピアノには、地元の小学生が「なみえまちのミライ」をテーマにペイント。浪江町の花として知られるコスモスをはじめ魚や動物などが色とりどりのペンキで描かれ、カラフルなグランドピアノに生まれ変わりました。そして秋には、復活したピアノのお披露目コンサートがそれぞれの地域で開催されました。

まず浪江町は、避難指示が解除されたばかりの津島地区で開催されたお祭りで演奏しました。遠藤さんが運転する4トントラックの荷台がステージです。地元の子供達の演奏に由紀江さんがワンポイントアドバイスをしたり、浪江の素晴らしさを伝えながら町の復興を応援するヴォーカルユニットsatoko&satomiともコラボ。歌ったり踊ったり大いに盛り上がった後は、会場となった津島小学校、そしてこのピアノが元々あった津島中学校の校歌を全員で合唱しました。

その2週間後には、双葉町の復興産業拠点「フタバスーパーゼロミル」でお披露目コンサートが開催されました。復興の役に立ちたい、双葉で働く潮流を作りたいという思いで浅野撚糸が建設したタオル工場は、タオルショップやカフェなどを併設したモダンな建物。その真ん中にある吹き抜けに真っ赤なドレスで登場した由紀江さんは、関係者の皆さんとピアノの除幕式を行い、華やかな曲からスタートしました。それはまるで、復興に向けて歩きはじめた双葉町の門出を祝福しているようでした。

浅野撚糸からのリクエストで中島みゆきさんの「糸」を演奏し、繋がりの大切さを綴った後は、地元のコーラスグループも加わり、ピアノが置いてあった双葉中学校の校歌を合唱。最後は「これまでこの街が故郷だった人、そしてこれからこの街が故郷になる人、私もまたここに帰って来ます。」と言って「ふるさと」を演奏。会場のみなさんも一緒に歌ってくれました。

会場のパンフレットにはこう書かれていました。
「京都には歴史がある、東京には今がある。双葉町には未来がある。」

これからこの街はどのように変わっていくのでしょう。
次回に訪れるのが今から楽しみです。